この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
1.相談者様、本件依頼時30代の女性です。相談者様の旦那様の会社の役員をしながら非常勤で会社に勤めていました。2.相談者様は、旦那様の会社の経営が厳しくなったことから、それを援助するべく多額の借入をして旦那様の会社貸し付けました。当時は相談者様は常勤で働いており、それなりの収入があったため多額の借入ができました。しかし、努力の甲斐なくの旦那様の会社は破産してしまいました。相談者様の旦那様は、新事業を立ち上げ再起を図りましたが、軌道にのりませんでした。相談者様は事情があって、非常勤として働かざるをえなくなり、収入が大幅に減ってしまったことから借金の返済が困難になってしまいました。3.そこで、相談者様は、当事務所の弁護士に本件について相談しました。相談者様には自信名義の住宅ローン付きの自宅不動産があり、これを手放すことができないことから個人再生手続を申し立てることにしました。
1.弁護士は,住宅ローン債権者を含む各債権者に対して受任通知を送りました。2.債権者の中に自動車ローン債権者もいました。当然その車には所有権留保がついていましたが、自動車の名義自体は自動車の価値が低かったことから、相手方は自動車ローン債権者は引き上げを行わず、所有権留保の解除を行い、自動車を手元に残すことができました。3.小規模個人再生手続の住宅資金特別条項では、住宅ローンのリスケジュールが行われることがあり、本件受任時に5か月分の住宅ローンの滞納があったことから、リスケジュールの意向を住宅ローン債権者に対して伝えましたが、リスケジュールには応じられないと言われましたので住宅ローンだけは遅延がない状態にせざる得ず、その分だけ申立までの準備期間が延びてしまいました。4.毎月の家計収支表をつけて、収支状況の改善も行いました。この間、旦那様が体調を崩され、旦那様の会社における仕事が増えたことから旦那様の収入が減り、収入相談者様の収入が増やすことになりました。5.収支を改善した結果、毎月6万円ほどの積立が家計全体でできようになり、これならば再生計画を通すことができると考えました。個人再生に申立には、給与所得者再生と小規模個人再生の2種類があり、一般的に給与所得者再生の方が債権者の消極的同意が不要である一方で支払総額が大きくなる傾向にあることから小規模個人再生を申し立てることが多いのですが、今回は給与所得者再生と小規模個人再生で支払額の変動がなかったため、主位的に給与所得者再生と予備的に小規模個人再生を申し立てました。6.給与所得者再生は収入の変動が少ない場合に認められる制度で、一般的に申立前2年間の間に年収額が5分の1以上の変動がない場合に認められる扱いになっています。ところが、相談者様の場合には収入が申立時よりも1.5倍ほど増えたため、給与所得者再生に難色を示しました。これに対して、弁護士は、民事再生法239条で収入の変動が小さい場合の給与所得者再生が認められているのは、可処分所得の2年以上の金額を安定的に支払うことができるためであり、収入が大きく下がる可能性があるということであれば条文の要件は満たさないと考えられ、過去2年間よりも安定的に収入が上昇し、それが過去2年分と比してほとんど下がる見込みがないのであれば、「変動の幅が小さい」という要件は満たされるものと解するべきと主張しました。そして、旦那様の会社からの収入は、旦那様の収入を減らして相談者様の収入を増やしただけで世帯全体でみたら変わらないこと、非常勤の仕事の収入状況も改善されていることからすれば安定的な収入が、見込まれ、給与所得者再生の要件を満たすと主張しました。そうしたところ、裁判所は、弁護士の主張を認めたのか、給与所得者再生の決定を認めました。これにより債権者の消極的同意の有無にかかわらず、裁判所が認めれば再生計画が認可が得られる状態になりました。7.再生開始決定後も順調に収支を改善していった結果、再生計画案は無事に認可され、総債務額1034万1409円は206万9320円に減額され、これを3年で返済すればいいことになりました。相談者様は家計簿つけて毎月6万円の積立を続けていたため、支払い開始時の時点で90万円の返済用の積立ができていました。これにより実際には100万円余りを3年で返済すれば足りることになり、余裕をもって返済できる状態になりました。
1.沢山の問題はありましたが、相談者様の収支の改善ができたこと、収入の変動があったにもかかわらず、給与所得者再生を活用できたことを嬉しく思います。相談者様や旦那様にも非常に喜んでいただくことができました。2.法的な手続はもちろん、定期的な面談を通じて家計収支の改善を図っていくことの意味は大きいとこの事件を通じて改めて感じました。