この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
建設現場において,一人親方の労働者が,クレーンの吊り荷が落下するという事故で亡くなりました。事故状況が明らかではなかったため,建設会社とクレーン運転手の会社は,労働者の責任が大きいなどとして,賠償額の提案は十分ではありませんでした。
解決への流れ
まずは調停を申し立てたのですが,両社の態度は変わりませんでした。そこで事故状況をつかむため,依頼者の方に労基署に対して労災の調査結果について個人情報開示請求をしてもらったところ,何と肝心なところはみな真っ黒黒の黒塗り!義憤(?)にかられた私は,せめて図面や写真など客観的資料は開示せよということで,国を被告として,直ちに個人情報開示請求訴訟を提起しました。国は図面や写真を非開示とする必要性を説明するのですが,その説明は成り立たないことをできる限り具体的に主張立証しました。結局,横浜地方裁判所は,当方の請求を認める判決を出しました。こうして開示された図面等をみると,クレーンの運転手が吊り荷を労働者の頭上にもってきたいたことが判明しました。これら図面等を証拠として,建設会社とクレーン運転手の会社に対し損害賠償請求訴訟を提起し,運転手の言い分がこれら図面等と食い違うことを明らかにして,相応の賠償額を得ることができました。
□上記の個人情報開示請求訴訟の判決は,裁判所のウェブサイトでも取り上げられています。http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/494/083494_hanrei.pdf行政機関に対する個人情報開示請求がなされた際,図面,写真といった客観的資料については非開示は簡単には認められないということで,判例としての意義があるといえるでしょう。□この事件の解決としては,証拠不十分ということで安易に調停を成立させずに,きちんとやり切れたと思っています。