犯罪・刑事事件の解決事例
#人身事故 . #慰謝料・損害賠償

【脛骨高原骨折・膝内側側副靭帯損傷・鼻部挫傷】<示談提示額60万円⇒裁判で約1350万円獲得><後遺障害等級併合11級獲得>症状固定時に膝可動域制限→治療期間中膝が動いていた被害者。

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木村 治枝 弁護士が解決
所属事務所弁護士法人小杉法律事務所福岡オフィス
所在地福岡県 福岡市早良区

この事例の依頼主

20代 女性

相談前の状況

Bさんは20代大学生の女性で、アルバイトをしながら学生生活を送っていました。帰宅途中、道路を横断する際に、四輪車にはねられてしまい、左脛骨高原骨折、左膝内側側副靭帯損傷、鼻部挫傷といった傷害を負ってしまいます。計3か月程度の入院をし、その間、懸命にリハビリに励み、一時期はまったく動かなくなっていた膝が動くようになっていました。退院後もリハビリ通院を続けましたが、左膝の可動域はフルには動かなくなり、右膝と比べ、3/5程度しか動かなくなってしまいます。Bさんは、膝の痛みや動きづらさ、そして、鼻の傷について気になっていて、後遺障害等級の申請は弁護士に任せた方が良いのではないかとネットで調べて思うようになり、弁護士に相談することにしました。★法律相談Bさんのご家族が来所され、法律相談を実施しました。Bさんからこれまでのご事情をお伺いした後、今後の流れや損害賠償額の見込みについて説明をします。Bさんは近く症状固定を控えていて、これから後遺障害診断書を書いてもらうということでしたので、後遺障害診断書のポイントについても説明をしました。Bさんのケースの後遺障害診断書のポイントは下記の3点です。① 後遺障害診断書の自覚症状欄の症状の記載方法:神経症状は端的に記す後遺障害診断書の自覚症状欄は、症状が残存している部位と、その症状(痛み・痺れなど)を端的に書いてもらうことが重要です。自身の大変さを分かってもらおうと、自覚症状について多くの記載を求める人がいますが、それが後遺障害等級を取る上で加点として評価されることはほとんどなく、むしろ揚げ足取りの材料として使われしまうことがあります。例えば、「●●をするときに膝が痛むため●●ができなくなった」など、自身ができなくなってしまったことを伝えようとする場合、自賠責保険というのは、「●●ができなくなって可哀想に」とは思ってくれず、逆に、このような記載ですと、「●●をするとき以外は膝は痛くないのですね」と判断してきます。脛骨高原骨折の場合は、後遺障害等級が獲得できることがほとんどで、局部の神経症状の上位等級である12級13号が獲得できるケースも多いですが、変なところで揚げ足を取られないようBさんに注意をしました。② 他覚症状および検査結果の欄の記載方法:症状の裏付けとなる所見を記してもらう他覚症状および検査結果の欄には、症状の裏付けとなる所見を記載してもらうことが重要です。後遺症が残ってしまったことを伝えるのが後遺障害診断書ですから、後遺症の医学的な裏付けを書いてもらうのです。症状の裏付けと関係のない所見や「所見なし」という所見は記載の必要がありません。明確な医学的な裏付けがなくても認定される後遺障害等級というのは14級9号のみで、より上位の後遺障害等級が考えられるケースでは、この欄の記載が重要になってきます。Bさんは、脛骨高原骨折の傷害を負っていて、膝可動域制限も残していましたので、骨癒合の状況や膝関節の拘縮などの医学的原因を記載してもらうことが重要となってきます。③ 醜状欄の記載を忘れない後遺障害診断書を書くのは整形外科医の主治医ということが多く、形成外科にも通っていたようなケースでない限り、顔にキズが残ってしまったことなども整形外科に記載してもらわないといけません。醜状欄にキズが残ってしまったことの記載をしないと、そもそも醜状障害の後遺障害等級の該当性を判断すらしてくれないのです。Bさんには鼻に薄く傷が残っていましたから、醜状欄への記載をしてもらうようお伝えしました。

解決への流れ

第1 後遺障害等級の認定1 後遺障害診断書の作成法律相談時にお伝えした方針で病院宛にお手紙を作成し、Bさんにお渡し、要望どおりの後遺障害診断書となりました。2 醜状面談への弁護士の同行始点と終点をキズの濃い部分のみで測ろうとしていたので、誤りを指摘。無事、Bさんが事故によって生じた傷の部分を適正に測定してもらえました。3 後遺障害等級併合11級の認定以上の活動が奏功し、左膝機能障害12級7号と外貌醜状障害12級14号が認定され、後遺障害等級併合11級であるとの認定を受けることができました(自賠責保険金331万円)。第2 示談交渉の決裂保険会社側の弁護士は、左膝の機能障害の自賠責保険の認定は誤りであり、後遺症であるとの主張は認めないと主張をし、逸失利益は払わないと言ってきました(示談金の提案60万円)。第3 民事裁判1 被告の主張被告は、Bさんの膝は入院中は動いていたのであって、詐病による後遺症であると主張してきました。また、保険会社というのは、お抱えの顧問医がいますので、Bさんの膝の可動域制限は詐病である旨の意見書を提出してきました。2 原告の反論(1)主治医に対する医師面談と意見書の作成保険会社側の顧問医の作成した意見書の妥当性について事前に調べた上で、主治医の見解を聞きに行きました。保険会社の顧問医というのは、中には適切な医学的意見を書かれる方もいらっしゃいますが、多くの場合、保険会社に忖度した意見しか書きませんので、その内容や医学的な裏付けが不十分であることが多いです。Bさんの骨折の程度が軽いであるとか、不自然な可動域の推移であるなどの意見が述べられていましたが、骨折の程度が重いこと、膝可動域の推移は医学的に見て不自然ではないことなどを主治医の先生に説明してもらいました。お伺いした内容をこちらで整理して、原告側も医学的意見書を提出することにしました。(2)医学文献からの反論保険会社側提出の意見書には、脛骨高原骨折のことのみが記されていて、左膝内側側副靭帯損傷のことについては一切触れられていませんでした。そこで、脛骨高原骨折に靭帯損傷を合併していた症例では、可動域制限を残す傾向が見られるという医学文献を提出し、保険会社側の意見書が不当であることを主張しました。3 尋問主尋問では、Bさんの膝可動域の推移が不自然ではないことを裏付けるため供述をしてもらいました。ところが、反対尋問で、BさんのSNSの写真や動画が提出されることになりました。Bさんが旅行などをして楽しんでいる写真が提出され、後遺症は残っていないのではないかとの主張がなされることになりました。また、尋問の日にBさんは、保険会社が雇った探偵をつけられていて、保険会社側の弁護士は、その探偵資料をもとに、Bさんは普通に歩けているし後遺症は残っていないのではないかとの主張が出されました。4 主治医意見書によるフォローSNSでの旅行写真や探偵資料に対して、念のため、主治医の先生に医学的な見地からのアドバイスをもらいにいきました。左膝機能障害12級7号というのは、右膝に比べて3/4以下の可動域制限が生じてしまったという後遺症ですから、問題なく歩行はできますし、旅行に行くことも差し支えない旨の意見をもらうことができ、それを意見書として証拠提出しました。5 判決左膝の機能障害についての後遺障害等級を認めてくれ、勝訴判決となり、遅延損害金を含めて約1350万円(自賠責保険金331万円除く。)での解決となりました。

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木村 治枝 弁護士からのコメント

【解決事例のポイント】① 保険会社の示談提示額60万円⇒裁判で約1350万円獲得② 入院中は膝が動いていた被害者について、医師の意見書により膝の可動域制限の後遺障害等級獲得③ 弁護士が醜状面談に同行することにより微妙な鼻部挫傷について後遺障害等級獲得④ 判例誌掲載判決(自保ジャーナル2062号45頁:福岡高等裁判所令和元年11月19日判決・福岡地方裁判所令和元年6月19日判決)⑤ SNS投稿や探偵に注意【コメント】1 保険会社の回答が渋い場合は裁判するべき(保険会社提示額の60万円から22.5倍の約1350万円で解決)裁判をすることに抵抗のある方もいらっしゃると思いますが、本件のように60万円だった提示額が22.5倍の約1350万円まで増えるようなケースもあります。裁判するかどうかの見極めは、被害者側専門の弁護士と相談の上、決定するのが良いと思います。本件も、Bさんははじめ裁判に乗り気ではありませんでしたが、無事解決することができ、最後に喜んでおられました。2 SNS投稿に注意このケースは保険会社が徹底抗戦の姿勢を示していましたので、BさんのSNS(facebook・twitter・instagramなど)をすべてチェックされていました。ですので、交通事故被害者の方は、保険会社の担当者や弁護士が、SNSを見ている可能性があるということは頭に置いておいてほしいと思います。3 探偵を付けられることがありますこれは多くはありませんが、本件のように、保険会社が徹底抗戦の姿勢を示しているケースでは、探偵を付けてくることがあります。Bさんのケースでは探偵を付けられたがために、こちら側の主張が崩されるということはありませんでしたが、友人とも付き合いのために、後遺症を負っているけれども無理な運動をしたというようなことがあると、その瞬間を撮られてしまい、後遺症がないという証拠として使われてしまうことがあります。探偵はプロですから、気付くのは難しいと思いますが、後遺症の残っている方は、お身体のこともありますし、無理な行動はしないようにしてください。