6564.jpg
天然部長「みんな忙しいから歓迎会は日曜日ね」→法的に残業代、手当はつかない
2018年05月05日 09時40分

「みんなが来られるように、歓迎会は日曜日に開催します」。職場の女性だけが入るメーリングリストに届いた、Y代部長の投稿を読み、A美さんは動揺を隠しきれなかった。

「最近、夜の飲み会は疲れやすいので、仕事を口実に歓迎会を欠席しようとしたら、同じように欠席希望が相次いだようです。Y代さんが、それならと休日開催を提案してくれたのですが、これでは断ることができません」とA美さんは話す。

東京都内のメディア関連企業に勤務するA美さんが新卒で入った時、すでに女性社員限定の歓迎会や忘年会などの社内行事があった。「昔は女性社員も少なくて、結束する必要があったのだと思います。その時の名残ですが、今は女性社員も増え、女性限定の集まりを開催する必要はないと思うのですが」。

問題は「実質、強制であることです」とA美さんは話す。

「全員が出席できるように幹事は予定を調整します。女性限定の催しがあると知ると、男性上司たちは時間通りに職場を出るように配慮してくれるほどです。

女性限定だからではなく、私はあらゆる飲み会が苦手で、遠慮したいんですよね。でも断れば、男性社員から『あいつは女性に冷たい』と噂されますし、今回のように休日に開催されるなら、しっかり業務として認め、その分も休日出勤手当を請求したいです」

休日に開催される女性社員限定の集まり。これは業務として認められるのだろうか。また、業務として認められるのであれば、どのような条件が必要か。椎木仁美弁護士に聞いた。

「みんなが来られるように、歓迎会は日曜日に開催します」。職場の女性だけが入るメーリングリストに届いた、Y代部長の投稿を読み、A美さんは動揺を隠しきれなかった。

「最近、夜の飲み会は疲れやすいので、仕事を口実に歓迎会を欠席しようとしたら、同じように欠席希望が相次いだようです。Y代さんが、それならと休日開催を提案してくれたのですが、これでは断ることができません」とA美さんは話す。

東京都内のメディア関連企業に勤務するA美さんが新卒で入った時、すでに女性社員限定の歓迎会や忘年会などの社内行事があった。「昔は女性社員も少なくて、結束する必要があったのだと思います。その時の名残ですが、今は女性社員も増え、女性限定の集まりを開催する必要はないと思うのですが」。

問題は「実質、強制であることです」とA美さんは話す。

「全員が出席できるように幹事は予定を調整します。女性限定の催しがあると知ると、男性上司たちは時間通りに職場を出るように配慮してくれるほどです。

女性限定だからではなく、私はあらゆる飲み会が苦手で、遠慮したいんですよね。でも断れば、男性社員から『あいつは女性に冷たい』と噂されますし、今回のように休日に開催されるなら、しっかり業務として認め、その分も休日出勤手当を請求したいです」

休日に開催される女性社員限定の集まり。これは業務として認められるのだろうか。また、業務として認められるのであれば、どのような条件が必要か。椎木仁美弁護士に聞いた。

●「業務と認められない場合が多いと考えられる」

「 会社の歓迎会などの社内行事については、残念ながら業務と認められない場合が多いと考えられます。

業務かどうかについては、(1)事業主からの参加の強制があったかどうか、(2)強制の程度、(3)参加しない場合の不利益処分などがあるか、(4)事業主からの場所・時間・運営・準備などに関する指示があるか、(5)事業主と社員のどちらの費用負担か、などから判断されることになります」

●今回のケースは「業務として認めてもらうのは難しい」

今回のケースでも、業務と認められないのだろうか。全員が来られるように休日に設定されたことから「実質強制」と言っても良さそうだが。

「今回のケースは、残念ながら業務として認めてもらうことは難しそうですね。

事業主が主催するものではなく、女性社員有志が主催しています。また事実上断りにくい社内の雰囲気ではあっても、事業主から参加を求めるはっきりとした指示はなかったようです。

さらに、参加しないことによって業務上での明確な不利益(例えば、人事評価においてマイナスの査定とされうるなど)はないと思われます。歓迎会の開催にあたって、事業主から場所・時間・運営・準備に関する指示もないことからも、業務と認めてもらうことは難しいものと考えられます」

逆に、どのような状況であれば、業務として認められたのだろうか。

「事業主から参加を明示的に義務付けられていたり、参加しないことのペナルティが課されていたり、A美さん自身が事業主から行事の運営や準備を指示されていたりする場合には、業務にあたる可能性があると考えられます」

●「できるだけ強制的な雰囲気を作らない」

続けて、椎木弁護士は「業務かどうかに関しては、残業代・休日手当などの請求が可能かという問題以外にもある」と指摘する。

「行事中や行き帰りの事故などが労災補償の対象となるかという問題にもなります。こちらについては、事業主の明示的な義務付け・指示等まではないケースでも業務と認められた事例が一部にはあるようです。

いずれにしても、基本的には社員有志による社内行事については業務と認められないケースがほとんど考えられますので、できるだけ強制的な雰囲気を作らず、一人一人の考えや価値観を尊重にする社内の雰囲気作りをすることが重要ではないかと考えます。

子育て世代を含めて女性の社会参加が進み、ワークライフバランスが推進されている現代においては、女性社員の中でも休日や終業時間後の過ごし方については多様な価値観があるものと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る