この事例の依頼主
40代 男性
相談前の状況
相談者は大学准教授として働いていたところ、突然の雇い止めされたとご相談に来られました。賃金が支払われていないため早期に賃金が支払われる状況を確保すること,また,大学の先生であり研究を継続することが極めて重要であったことから,賃金仮払いの仮処分,仮の地位を定める仮処分の申し立てをすることを考えました。
解決への流れ
まず,賃金仮払いの仮処分,仮の地位を定める仮処分の申し立てをして認められました。賃金を仮に払わせて、依頼者の生活を確保してから、裁判を地裁、高裁、最高裁と行いました。その間、もう一度、賃金仮払いの仮処分,仮の地位を定める仮処分の申し立てを行いました。いずれも請求の大部分が認められました。
この事件は,労働判例 1024号5頁(2019年9月15日号)に(〜業務遂行能力不足等を理由とする雇止めの適法性等〜学校法人梅光学院ほか(特任准教授)事件〈付 原審〉(広島高裁平31. 4.18判決,山口地裁下関支部平30. 3.27判決)として掲載されました。https://www.e-sanro.net/magazine_jinji/rodohanrei/d201909015.htmlこの事件は、1年の有期契約の特任准教授が1度も更新することなく雇止めとなった事件でした。通常、契約の更新がない場合には、雇用継続の合理的期待がないと判断されやすく、契約更新が認められにくいのですが、本件では丁寧に主張立証を行った結果、少なくとも5年間は雇用継続の合理的期待がある可能性が高いという判断となりました。また、雇用契約の付随義務として、学校法人は特任准教授に対し図書館を利用させる義務があるという判断をした点は先例的価値があると考えられます。請求は棄却されましたが、研究室の利用についても「研究室の利用も,教員の学問研究のために認められるべきものではある」と広島高裁は判示しています。研究室が利用できなかったことを理由に不法行為に基づく損害賠償請求をすれば請求が認められる可能性が示唆されているように思います。